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最高裁判所第三小法廷 昭和45年(オ)104号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由第一点について。

本件婚姻の届出が亡大島一郎の意思に基づくものであつて、有効である旨の原審の認定判断は、原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)挙示の証拠に照らして肯認することができる。したがつて、原判決に所論の違法はなく、所論は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の評価ないしは事実の認定を非難するに帰し、採用することができない。

同第二点について。

将来婚姻することを目的に性的交渉を続けてきた者が、婚姻意思を有し、かつ、その意思に基づいて婚姻の届書を作成したときは、かりに届出の受理された当時意識を失つていたとしても、その受理前に翻意したなど特段の事情のないかぎり、右届書の受理により婚姻は有効に成立するものと解すべきであり(最高裁判所昭和四一年(オ)第一三一七号同四四年四月三日第一小法廷判決、民集二三巻四号一頁参照)、本件婚姻届書の作成および届出の経緯に関して原審の確定した諸般の事情のもとにおいては、本件婚姻の届出を有効とした原審の判断は相当である。したがつて、原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 下村三郎 裁判官 田中二郎 裁判官 松本正雄 裁判官 飯村義美 裁判官 関根小郷)

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